東京都庭園美術館『装飾は流転する』

白金台にある「東京都庭園美術館」へ。
いわゆる「美術館」とは少し趣の違う朝香宮夫妻(皇族の一家)の邸宅だったこの建物は、それ自体がすでに、ひとつの美術品のよう。
こだわり抜かれた美意識が、細部の細部まで散りばめられていて、毎回行くたびにうっとりして、何度も何度もため息をついてしまう。(はぁ・・・!)

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今回は「装飾」を軸にして、多種多様なアーティストが集合する「装飾は流転する」という展示。
こういったコンセプトをメインにおいた展示は、出会わないものたちが出会う「偶然性」が、作品と作品のあいだの空気を埋めて尽くしていて、心がどうしようもなくワクワクする。

行き過ぎた「装飾」から、目を凝らさないと気がつかない「装飾」、
再編集/サンプリングされた「装飾」、日常の延長線上にある「装飾」まで。
どの作品も共通しているのは、触りたくなる「質感」と、覗き込みたくなる「繊細さ」。

 

その中でも印象的だったのは、コア・ポア(Kour Pour)というアーティスト。

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絨毯の修復職人だったイラン系イギリス人の父親からインスピレーションを受け、ペルシャ絨毯の柄をベースに、独自の感性をキャンバスに重ね合わせていくそのスタイルは、唯一無二。
絨毯の歪みまで再現していて、遠目に見るとそれが絵だとは分からなかった。
近づいていってよーく見ると、愛嬌のある絵のタッチと色合いがとても印象的で、思わず頬が緩んでしまうものも。
ヒップホップとの出会いがひとつのターニングポイントだと分かる、彼のドキュメンタリー映像もとても興味深かった。
それぞれの作品が、一曲ずつ楽曲になったらどんな風になるんだろうなぁ。(妄想)

 

コア・ポアの作品は、そのほとんどが「新館」の方に展示されていたのだけれど、シックな庭園美術館の本館には、それぞれの質感が美しく混ざり合う、ヴィム・デルヴォワ、ニンケ・コスター、髙田安規子・政子などの作品。
そして、それらに相反するかのように、山縣良和の作品が違和感を醸し出して、それぞれの魅力を引き出す。

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ヴィム・デルヴォワ

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ニンケ・コスター

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髙田安規子・政子

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山縣良和

 

彼らの試みを見る時、
私たちは装飾という行為が、
生々しい現実を複雑なまま認識するために必要な切り札だということに気がつくのです。
––––––––––––– 東京都庭園美術館 オフィシャルサイトより


この「生々しい現実を複雑なまま認識する」感覚は、この展示に訪れる数日前に観た映画「ブレードランナー 2049」で、強烈に感じたところだった。
また、この情報過多な現代に対して・・・"対して"じゃないな、現代"の中で"、日々抱いている感覚でもあった。
庭園美術館を出た瞬間、私の中で、それらの「混沌」「混乱」の歯車が、ゆっくりと回り出した。

「いびつにしたい」とも思うし、
「きれいに納めたい」とも思う。
それが、人間の本能なんだろうな、と思う。 

 

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「本館」と「新館」をつなぐ通路からの景色。
澄んだ空気の中で、月が美しく浮かぶ夜。
明けて次の日、東京では4年ぶりの大雪。

 

 

2014年から2016年に制作された、スコットランドのHugh Smallによるピアノ・ソロ曲集『Piano Music』は、深深とした空気にぴったりの作品。


HUGH SMALL - Mission Statement

彼は、女性シンガーのAnna Howsonとニュー・ウェイブ色の強いデュオ「Vazz」としても活動をしており、最近、ベルギーのレーベル《STROOM 〰》から『Submerged Vessels And Other Stories』をリリースしており、そのボーナスCD付属として、この『Piano Music』がついてくる。
本編の『Submerged Vessels And Other Stories』は、バンドサウンドの楽曲と、ピアノソロの楽曲が入り混じった構成になっている。
この、「ん?」とちょっと振り返りたくなる存在が、たまらなく好き。


VAZZ - Mezquita


VAZZ - Pearls Dub